スペック
  • タイトル
    : シノビマスター 閃乱カグラ NEW LINK
  • 配 信 日
    : 好評配信中
  • ジャンル
    : 爆乳ハイパーチームバトル
  • 対応OS
    : スマートフォン(iOS/Android)
    Windows7/8.1/10 64bit
  • 価  格
    : 基本プレイ無料(一部アイテム課金)

スペシャル SPECIAL

コミケ102小冊子 先行公開!

協力要請前日①

剣豪などと大層な表現をしているが、私の本業は学生である。

基立星十字学院(きりつせいじゅうじがくいん)に通う生徒であり、日々勉学に勤しみながら、学友と切磋琢磨し、そして――これは一部の人間しか知らないが、忍の仕事をこなしている。

――

それは遥か昔、戦国の世にあった影の存在である。

忍の歴史を語り始めてしまうと私の話のスペースが無くなってしまうので、簡潔に説明しよう。忍は今も存在する。ほぼ絶滅危惧種に近いが。

ただ、現代の忍は二種類いる。国に所属し、国家や民のために尽くす事を生業とする「善忍」、そして国に所属せず、雇い主の利益のために暗殺や破壊活動などを主な生業とする「悪忍」だ。

ちなみに基立星十字学院は、政治家や大企業の社長になる者、はたまた権力を持った人物の奥方になる者などを数多く輩出している超エリートな学校である。そして、その裏では私のような忍を育成するための教育をしている学校でもある。

さて。私の口ぶりからもう私が善忍か悪忍か、どちらかお分かりだろう。

そう、悪忍だ。善忍かと思われた皆々様におかれては、まだ修行が足りておられないように見受けられる。とはいえ悪忍だからといって、ここでは言えないような悪辣非道な行いをしているわけではない。

私の学校では一般社会に溶け込んで、表向きでは善人のように振る舞いつつも、裏では暴力や権力にものを云わせて弱者から大切なものを奪う善人のふりをした悪人を排除する、というのが主な教育方針である。いわゆる人を殺める事を仕事としているから悪忍なだけなのだ。悪人を罰する悪忍というわけだ。

とまぁ、説明ばかりでは退屈してしまうだろう。なので話を戻そう。どうして私が憂鬱なのか。

それはほんの寸刻前に私が忍務を終えて、学院の制服に着替えたあとまでさかのぼる。
「ふう……。やはり忍務のあとの一杯は格別だな。」

およそ高校一年生には似つかわしくない発言をしているかもしれないが、忍務が終わった後の私は必ずお気に入りのジュースを飲むことにしている。基本これが日課なのだ。だって本当に美味しいんだもん。

この後は食堂でご飯を済まして、お風呂に入ったあとゆっくり就寝するだけ、学院に入ってからは慣れた日常である。

さて、今日は何を食べようかと万考していたところだった。
「紅葉さん、緊急事態です!」
「タマか、そんなに焦って何事だ?」

唐突に私の部屋に入ってきて緊急事態を宣言してきた人物は玉響(たまゆら)という。玉響だからタマだ。同じ星十字学院の生徒ではあるが、タマは三年生なので先輩である。見た目は私より全然身長が高く、モデルのような体型に、変わった目隠しをしている。目が見えないわけではないらしいが、詳しいことは私もわからない。

あと、胸がでかい。他意はないが、もう一度申し上げよう。胸がでかい。
「あいも変わらず豊満な胸をしているな」
「何の話ですか?」

おっと、つい思っていたことが口に出てしまっていたようだ。
「緊急事態ということだが、特に星導会から通達などは来ていないぞ?」

本来であれば急ぎの案件が生じた際には、私が所属している「ゾディアック星導会」と呼ばれる星十字学院内における忍の選抜メンバーに連絡が来るようになっている。

ちなみにタマもゾディアック星導会の一員である。普段は急に部屋に入ってくるような性格ではないので、本当に焦っているのだろう。

しかし、何だろう。(自分で言うのもアレだが)剣豪の勘だろうか、ものすごく嫌な予感がする。いや、タマのこの真剣な顔だ。きっと深刻な事態が――
「愛犬のケルベロスが失踪しました」

剣豪関係ないじゃん。

協力要請前日②

ケルベロスというのはタマが飼っている犬のことだ。私も何度か対面したことがあるが、鳴き声が「ヘーン」と、やや変わっている愛くるしい三つ首のチワワである。

ちなみに私とタマは学院の寮で生活している。厳格なルールはあるが、しっかり守りさえすればペットを飼う事も許されているのだ。
「朝ご飯の時はちゃんと居たのですが、先ほど帰ってみたらどこにも姿がないのです。お願いです、一緒に探して頂けませんか?」
「探してやりたいのは山々なのだが、私も忍務から帰ってきたばかりで疲れているんだ。それに、どうして私が」
「紅葉さんはたしか甘いものがお好きですよね。最近、学院近くにできた五つ星ホテルのスイーツブッフェはご存じですか?」
「もちろん知ってるし、既に往訪もしている」

あそこのスイーツはどれも甘くて、ずっと居たくなるような場所だった。しかし、そんなもので私を釣れるほど剣豪紅葉は甘くない。
「そこの限定年間パスポートを差し上げます」
「引き受けよう」
「さっき疲れているって言ってましたよね?」
「ははは、誰だそんなつまらない冗談言ったのは」

だって年間パスポートだよ?忍の仕事で多少なりとも、報酬は出ているとはいえ、五つ星ホテルのスイーツブッフェを毎日行けるほどではない。それが毎日のように通えるのであれば、快く引き受けるのが真の友達というものだ。

「いえ、私とあなたの関係はただの先輩と後輩です」

エスパーか?
「ところで引き受けたのは良いが、心当たりとかはないのか?」
「ふだん散歩しているコースはすべて調べたのですが、どこもいませんでした。慎ましい生活を送っていたのにどうして……」

限定年間パスポートも買って、ペットも飼っているのに慎ましいと言えるあたり、学院がお嬢様学校であるということが伺えるだろう。

かくいう私も一応そこそこ名の通った家出身なのだが、その話はまたいずれ。
「そうなると学院内をもういちど見て回った方が良いかもしれないな。二手に分かれて探すとしよう」
「紅葉さん、ありがとうございます。もし仮にケルベロスが誰かと一緒だった場合は、いちど紅葉さんの方でケルベロスを保護してください」
「承知した。一緒にいた誰かはどうしたらいい?」
「殺してください」
「落ち着け」

そこは慎めよ。普段は何かにつけて「有罪です」「無罪です」って言ってるキャラなのに、今日は愛犬のせいでブレてるじゃないか。これを読んでいる読者様が畏怖の念を抱かざるを得ないよ。

協力要請当日①

一晩中探したものの、ケルベロスは見つからなかった。
学院の敷地はかなり広い。徒歩で移動する場合、寮も含めると2日あってもすべてを回り切れないほどの土地を有している。

そして、忍の私やタマが見つけられないのだ。ケルベロスはもしかしたら学院の外に出てしまった可能性が大きい。そうなるともう見つけるのは困難だ。

タマも「そんな……ケルベロス……」と絶望的な顔をしている。正直、すぐに見つけられるだろうと思っていたが、見立てが甘かった。

しかし、ここで諦められるほど私は非情ではない。
「タマ、もう一度いなくなった日の事を最初から思い出してみるんだ」
「しかし……」
「こういう時は原点を振り返ってみるのが大事だ。昨日、何か変わったことはなかったか?」
「たしか昨日は早朝ケルベロスを散歩したあと、一緒に朝食を食べました」
「なるほど、いつもの日課というわけだ」
「はい。その後は授業の準備をしていました。そして部屋を出る前に私が住んでいる部屋の水道が、少し水漏れを起こし気味だったので水道を直すついでに部屋のリフォームをする業者を」
「待て」
「えっ、どうかしたのです……あっ」
「謎はすべて解けた」

協力要請当日②

「ああっ! ケルベロス! 無事でよかった!」

まさかのミステリー展開かと期待された方には先んじて謝罪しておこう。誠に申し訳ない。これは忍の話であって探偵の話ではないのだ。そして何なら与えられている文字数もそろそろ限界に近い。

事の顛末としてはこうだった。

早朝ケルベロスを散歩に連れていき、朝食や授業の準備などを済ませたあと、水道の調子が悪いタマの部屋を直すついでにリフォームする事になったのだ。

その際、ケルベロスが居ては危ないという事になり、タマの隣の住人の部屋に一時的に退避させていたというオチだ。ていうかそんな事忘れるなよ。私の苦労は何だったんだ。そして居る場所が判明したため、いったん学生の本分である学院の授業を受けたあと、ケルベロスが居る部屋へと足を運んで今に至る。
「まったく、お前という子は私を不安にさせて、有罪ですよ」

スイカでも入っているんじゃないかというくらい豊満な胸でケルベロスを挟んでいるな。ていうか、ケルベロスは何も悪くないだろ。悪いのは全部タマであって、むしろケルベロスは被害者だよ。ケルベロスって何回言うんだ私は。
「紅葉さん、本当にありがとうございました。」

タマのとても嬉しそうな顔を見た時、私も安堵した。ケルベロスが本当に見つかって良かった、という気持ちよりも報酬であるスイーツブッフェの限定年間パスポートが貰えることが確定したからだ。

ゲットした瞬間に五つ星ホテルに直行だ!スイーツの前では普通の女の子になってもしまう。誰だってそうだ。
「紅葉様、玉響様」

そんなウキウキした気持ちから急に現実に呼び戻される。なぜなら今声をかけてきたのはゾディアック星導会の連絡係だからだ。この時点で嫌な予感しかない。
「麗王様からご助力の要請が来ております」

あぁ、愛しのスイーツブッフェさようなら。

皆々様、次は剣豪としてお会いしましょう。